2019/07/18 00:43



くちどけがなめらかなチョコレート。その原料がカカオであることはよく知られていますが、

カカオ実物を見たことのある方は少ないと思います。

 

チョコレートに比べてカカオを見る機会が少ないのは、カカオが限られた地域でしか栽培ができないためです。

普段よく食べるチョコレートの原料であるカカオについて知っておくと、違った形でチョコレートを楽しめると思うので、

今回はカカオについてご紹介します!

 

カカオってどこで育つの?

 

カカオは「カカオベルト」と呼ばれる高温多湿の熱帯地域で栽培されています。カカオベルトは、

北緯20度から南緯20度の地域のことをいいます。

この範囲内であればどこでも育つのではなく、標高30-300m、年間平均気温が約27度で気温の変化が少なく、

年間降雨量が1,000mm以上などいくつかの条件を満たした地域でのみ栽培が可能となります。

このような条件でしか栽培ができない繊細なカカオは、残念ながら日本では栽培するのは難しいと言われています

(一部で栽培されているともいわれていますが、量産化はされていません)。

 

同じような地域で栽培されている農作物にコーヒーやバナナがあります。コーヒーにも「コーヒーベルト」

と呼ばれる地域があり、同じく赤道付近でのみ栽培することができます。

標高や降雨量などの条件は異なりますが、同じく赤道付近で栽培される代表的な農作物であるため、

同じような国で生産が可能です。

 

植物としてのカカオはどんなもの? 


カカオの木は、高さは6-7m、幹の太さは10-20cmで成木といわれます。

栽培してすぐにカカオが実るのではなく、およそ3-4年目から実り始めます。

また、カカオは強い風や直射日光に弱いため、木が十分に育つまではシェードツリーと言われる木

(一般的にはバナナの木)をカカオを守るように農園周辺に栽培します。

シェードツリーを栽培することで、カカオを強い風から守り、シェードツリーによりできる日陰で直射日光を避けます。

重たくラグビーボールほどの大きさであるカカオは、意外と繊細な植物なのです。


カカオの花は、枝先や幹の太い部分に小さくかわいらしく咲きます。

木の種類によって花の色は異なり、白やピンク、黄、赤などの花を咲かせ、受粉後は約6ヵ月してから実を実らせます。

カカオの実は枝先ではなく、カカオの幹の太いところに直接おおきな実をぶら下げる点が特徴的で、

1年に2回収穫が可能です。実った実は「カカオポッド」と呼ばれ、重さは250g-1kg

1本の木に平均して20-30個の実がつきます。ラグビーボールをイメージするとわかりやすいかもしれません。

ラグビーボールほどの大きさが枝先にぶら下がると枝が折れてしまう危険性があることから、

太い幹に直接ぶら下がって実るともいわれています。

 

このラグビーボールほどの大きさのカカオポッドの中に30-40粒のカカオの実が入っています。

このカカオの実を発酵、乾燥、焙煎などのプロセスを経て、食べられるチョコレートにしていくのです。

もちろんカカオの実はカカオの種子ですので、土に埋めるとそこから芽が出ます。

 

カカオの学名

 カカオは「テオブラス カカオ リンネ」という学名でアオイ科の植物とされています(アオギリ科と言われる書物もあります)。

ギリシャ語で「テオ」は「神々」、「ブロマ」は「食べ物」を意味し、「神々の食べ物」といわれます。

古代メソアメリカでは、カカオはおいしく栄養価が高いことから、神々に捧げるにふさわしいものとして重宝されていました。

また、薬や貨幣としても利用されており、農民は年貢としてカカオを納めたり、

使用人の給料にカカオを支給されたりしていたと言われます。どのくらいの価値があったのかと言うと、

カカオ1粒で大きなトマト、100粒でウサギ1羽と交換できたと言われます。

 

カカオが古代メソアメリカで大変貴重であったことが分かるエピソード

 

クリストファー・コロンブスが最後の航海でホンジュラスに到着した際、マヤ人が乗ったカヌーと遭遇しました。

このときマヤ人らしき人は交易のため、トウモロコシやお酒とともにアーモンドを運んでいたのですが、

そのアーモンドを落とした時に自分の目でも落としたかのように地面にはいつくばって必死になって探していたと、

記載された書物が残っています。ここでいうアーモンドは、カカオであったことは間違いないと現代では解釈されています。

カカオ豆を落として必死になって探している様子を考えると、当時はカカオが大変貴重で価値のあるものであったことが分かります。

 

カカオの生産地

 

カカオはカカオベルトでしか栽培できず、気候にも条件があると上記で記載しましたが、

これらの条件を満たしカカオを栽培している主な地域は、中南米ではエクアドル、コロンビア、ベネズエラ、

西アフリカ地域ではガーナ、コートジボワール、東南アジアではインドネシアなどが挙げられます。

このように生産量が多い国からごくわずかな生産量しか持たない国々を合わせると約50か国となり、

カカオの全世界での年間生産量は469万トン(2016/2017年の統計)になります。

 

50か国で生産されているカカオですが、その中の主要7カ国で世界の生産量の約90%を生産します。

主要7カ国とは、コートジボワール、ガーナ、インドネシア、エクアドル、カメルーン、ナイジェリア、ブラジルとなります。

カカオの起源とされる中南米では現在はそれほど生産されておらず、現在の主要な産地はアフリカで、

全世界の生産量の約75%を生産しています。

 

実は生産者はチョコレートをみなことがない?

カカオベルトで生産されているカカオ。その生産に関わっている人は何千万人にものぼると言われています。

非常に多くの生産者がカカオの生産に関わっていますが、

そのほとんどの生産者がチョコレートをみたことがないと言われています。

カカオを生産している多くの農家は零細農家です。生活費を稼ぐためにカカオを栽培し、

収穫したものを麻袋に詰め、出荷するを繰り返しているため、最終的にカカオがどのような製品になっているのか

ほとんどの生産者が知らないと言われています。

また、気温の高い熱帯地域ではチョコレートはとけてしまうため、

あまり流通していないということも生産者がチョコレートを見たことがない一つの要因と考えられます。

カカオは生産しているけど、チョコレートは食べたことのない農家は多く存在するのです。


まとめ 

・カカオの生産可能地域は「カカオベルト」と呼ばれ、北緯20度、南緯20度までの地域をいう。

・栽培可能な主な条件は、標高30-300m、年間平均気温が約27度で気温の変化が少なく、年間降雨量が1,000mm以上など

・栽培から3-4年してからカカオが実る。風や直射二項に弱い繊細な植物。

・1年に2回収穫が可能であり、収穫したラグビーボールのようなカカオは「カカオポッド」と呼ばれる。

カカオは「テオブラス カカオ リンネ」という学名でアオイ科の植物。神々の食べ物を意味する。

・昔は通貨として使用されるなど、非常に希少価値の高いものであった。

カカオの全世界での年間生産量は469万トン(2016/2017年の統計)。

主要7カ国で世界の生産量の約90%を生産。

主要7カ国とは、コートジボワール、ガーナ、インドネシア、エクアドル、カメルーン、ナイジェリア、ブラジル。

・生産者はカカオを知らない!?


今回は植物としてのカカオに焦点を当てて紹介させて頂きました。

 普段何気なく食べているカカオについて少しでも知っていると、

商品購入時に違った視点でチョコレートを楽しめるかもしれません。

 別の記事でカカオの品種や生産地による違いも紹介しておりますので、是非読んでみてください。